イタリア生活でよく作るようになったレシピは?mayumiさんの【おいしい暮らし】
“イタリアで暮らす人しかわからないこと”をブログに
——mayumiさんがフーディストとしてレシピを発表するようになったきっかけを教えてください
「日本に里帰りしていたときに、友人たちにイタリアの暮らしについて話していたら、『Mayumiの話はおもしろい。イタリアにどっぷり両足突っ込んで暮らす人にしかわからない内容だよ。ブログに書いてみたら?』と言われたことがあったんです。
ちょうど、友人たちが次々と大きなキャリアUPやキャリアチェンジをしたという話も聞いていたので、子育てに追われる日々の中、私はこのままでいいんだろうか、私も何か新しいことをやりたい!という思いもあってブログを始めました。
ブログの内容は料理ではなくても良かったんですが、長く書き続けられるテーマはなんだろう?と考えた結果、毎日することで大好きなこと→食べること→それならレシピを載せてみよう、と今のブログが誕生しました」
——レシピを発表するようになってから、ご自身の生活にどんな変化がありましたか?
「イタリアの食文化に対してより興味がわくようになりました。イタリア料理はその歴史の長さはもちろん、知れば知るほど奥が深くて、『美食大国は一日にしてならず』という言葉を日々、実感しています。
もともと味にうるさくてイタリアの食にくわしかった夫も、食に対する探究心がさらに強くなり、ブログ作成において良きアドバイザーとなってくれました。彼なしでは年間200万人の方が訪れるブログにはならなかったと思います」
——そうしたレシピを考えたり、料理をしたりする上で大切にしていることはありますか?
「まずは、時短・簡単に走りすぎないことです。たとえば、イタリアのレシピには、顆粒のコンソメなど市販のだしが材料に書かれているものってほとんどないんです。ブイヨンなどの西洋だしは家で意外と簡単に作れるんですよね。
普段の忙しいときには、私も市販のだしに頼ることはあります。でも、時間のあるときには丁寧に作るおいしさを味わっていただけるように、私のブログではブイヨンなどの作り方も説明しています。丁寧に作った料理はやっぱりひと味違いますし、最初から自分で作って食べると味覚も敏感になっていくと思います」
「もう1つは、日本向けにアレンジしすぎず、イタリアで作られているイタリア料理レシピにすること。Instagramではイタリアの市場やスーパーでの買い物の様子もよく載せていて、レシピもイタリア人が本当に使っている食材で書いています。その分、日本では手に入りにくい食材は、詳しい説明や代用品もなるべく書くようにもしています」
——お忙しい毎日、お時間のない中で「味も見た目もおいしい料理を作るコツ、準備」などアドバイスをお願いします!
「結構単純なことなんですが、『食材はあらかじめ全部切ってから調理に取りかかる』です。材料がすべてカットされた状態だと、後の調理は本当にスムーズになります。たとえば、子どもの学校のお迎えの前に野菜を切っておくだけでも、帰ってからの調理の心理的負担もかなり軽減されますよ」
「見た目をおいしそうに仕上げるのは、やっぱり彩りでしょうか。赤・白・緑のイタリアンカラーの料理は、間違いなく食欲をそそる色ですよね。でも、茶色い料理も本当は好きです(笑)。疲れているとき、忙しいときは気負い過ぎる必要はないと思います!」
——イタリアにお住まいになってから特によく作るようになったレシピはありますか?
「イタリア野菜を使った料理です。中でもアーティチョーク(イタリアではカルチョーフィと呼ばれます)料理はシーズンになると本当によく作るんですよ。ブログにもアーティチョークのおいしい食べ方&レシピ集など、アーティチョークをはじめいろいろなイタリア野菜の食べ方とレシピを載せています。
それと、イタリアの豆腐を使ったレシピもよく作ります。イタリアでも最近はヘルシー志向が強く普通のスーパーでもTOFUを売ってるんですが、日本の豆腐とはほど遠く、木綿豆腐をさらにかたくしたようなもので(笑)。でも、水切りしなくてもそのまま使えるので調理するのに便利なんです」
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「日本とイタリアのレシピをじっくり見比べると、両国の文化の違いや国民性が読み取れておもしろいんです。イタリアを細かく巡ってもっと各地の郷土料理のレシピに触れ、いろいろ作ってみたいですね」というmayumiさん。レシピだけでなく、食材や習慣などイタリアの食文化についても書かれたmayumiさんのブログやSNSはまるでガイドブックのよう。イタリアを旅する気分で、じっくり読んでみてくださいね。
MayumiさんへのQ&A
——ブログ名「Bacchette e Pomodoro」の由来は?
「Bacchette(バッケッテ)とはイタリア語で“お箸”、Pomodor(ポモドーロ)は“トマト”の意味。日本とイタリアのダブルカルチャーのわが家を表すような、両国の食文化の象徴的な2つのものをブログ名にしました」
——大好物といえば?苦手な食べ物は?
「大好物は夫の作るラグーのパスタ!ラグーは週末やホムパのときによく作るんですが、ひき肉とトマトで作るソースは必ず夫の担当です。同じ材料で同じように作ってもなぜか夫が作る方が断然おいしくて(笑)、イタリア人の友人からもよく褒められます。パスタを打つのは私の仕事です。
苦手な食べ物はコテキーノ。イタリアで特に大みそかに食べる大きな豚肉のサラミで、とにかく脂が多い!これだけはいまだに食べられないですね」
——思い出の料理本はありますか?
「これはすごい!と思ったのは、ペッレグリーノ・アルトゥージ著『La scinza in cucina e l’arte di mangier bene(イタリア料理大全)』。1891年に出版されたイタリアでは料理界のバイブル的存在で、日本語訳もされています。今のレシピ本のように写真などは当然なく、掲載されている790のレシピもすべて文字だけの料理本なんですが、その時代にこれだけのレシピをイタリア全土から集める彼の食への情熱は本当にすごいなと思います。イタリアのフードライターたちはこの本を必ず持っていて、私もたまにレシピの中でこの本について触れることがあります」
——インテリアやライフスタイルなど参考にしているショップ、カフェ、雑誌、サイトなどはありますか?
「最近注目しているアメリカのインテリアデザイナー・Athena CalderoneのInstagramをよく見ていて、わが家のインテリアも影響を受けています。彼女は類まれなセンスと確かな審美眼の持ち主だと思います!私も密かにbacchette(@bacchette_casa)というインテリアアカウントをやっています。あんまり更新はしていないんですが(笑)」
——料理以外で、リラックスタイムの過ごし方といえば?
「週末は家族とよくトレッキングに出かけます。ミラノからはアルプスも近く、子ども連れでも大丈夫なトレッキングルートがいっぱいあるんです。山歩きはいいですよ!そんな山歩きの様子もインスタではよく載せています」
<ブログ>
「Bacchette e Pomodoro」
<Instagram>
bacchette e pomodoro(@bacchette_e_pomodoro)
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