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お悩み解決!井上かなえ(かな姐)のオンライン料理教室
井上かなえ(かな姐)
お悩み解決!井上かなえ(かな姐)のオンライン料理教室

煮物に味がしみ込まない!味付けに失敗した!そうならないための約束4つ

料理に関するちょっとしたお悩みに対して、解決方法をわかりやすく教えていただく料理研究家・井上かなえ(かな姐)さんのフーディストノート公式連載。今回は、家庭料理の定番でありながら思ったような味にならなかったり煮崩れしてしまったりすることが多い「煮物」を上手に作るコツを教えていただきます。
2022/10/16
2022/10/07
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豚こま肉を上手にほぐす方法とは...
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ささみの筋取りはこれだけでOK!...

こんにちは!井上かなえです。

わたしは料理が趣味であり、仕事でもあるので、よく「いつもおいしいものを食べられるご家族がうらやましいです!」とお声がけいただくのですが、

とんでもございません!!!!!!

ひとつの食材にハマってしまうとそればかりだったり、もっとおいしくするために次はこうしてみよう!と、すぐにやってみたくなる性格なので、家族はもう何日も同じような料理を食べさせ続けられることがあります。

「もう飽きてきたよ」と言う代わりに、娘たちはその料理がいかにおいしかったか、逆にダメだった場合はどこがダメだったかを詳細に語ってくれるようになった気がしますが、みなさんは最近、ご家族に料理の感想を聞いてみたことはありますか?

毎回聞かれると嫌がられるので、ほどほどにしつつ(笑)、たまには聞いてみるのも楽しいものです。

さて!前回のオンライン料理教室では豚こま肉を上手にほぐす方法について書かせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。

お肉を広げて料理しないといけないなんて、って思われた方もいらっしゃったのではないでしょうかね。

さて、今月のご質問はこちらです。

煮物によくあることなのですが、レシピ通りに調味料を入れても自分の好みに合わないせいか、味が薄かったり濃かったりします。しょっぱすぎる、甘すぎる、煮汁でベちゃべゃまたは煮汁が少なすぎて焦げつきそう…など。こうした時の修復方法を教えてください。

 

煮物などの甘い味付けが苦手で、砂糖、みりんを両方使うレシピだと大体は味見すると「甘ッッ」となります。かといって砂糖を省略すると物足りない感じ…。やさしい甘さでおいしくするにはどう工夫したら良いでしょうか?

煮物に関するお悩みです。

煮物に関してなのですが、これはほんっとうにレシピ通りにやってもいまいち味が決まらないことが多い!

なぜならそれは…使う食材(お肉やお野菜)の味に左右されやすいお料理だからなんです。

特にお野菜は季節によっても種類によっても、もしかすると産地によってもその味わいも水分量も様々で、一口に「じゃがいも」といっても男爵、メークイン、キタアカリ、インカのめざめ、それ以外にももっともっとあるし、季節によっては皮ごと調理ができたり、水分が多く含まれているから出汁の量もそれに合わせて減らさなくちゃいけなかったり。

まさに素材を見ながら調理し、仕上げに味を見ながら調整しないといけないからなんです。

だからこそ、レシピに書いてあるその通りに調理しても、

「あれれ?なんか違う」

「おやおや?味がボケてる?」

なんて、これで正解なのかなって味に仕上がってしまったりするわけなんですね。

使う調理器具や火加減でも全然煮る時間は変わってくるのですが、そこまでレシピ本には書いていないんです。

というわけで、今回は煮物を作ってお味見したら「ちょっと違う!」ってなったときの対処の仕方や、そうならないようにするために気を付けるべきポイントをおさらいしてみようと思います。

素材を見極める

まずは自分でできること。

それは、素材の見極めです。

根菜はなるべく皮をむかずに調理する方がわたしは好きなので、信頼できるスーパーで購入し、購入後にずーっと置きっぱなしにすることがないよう、早めに調理することを心がけます。

じゃがいもも新じゃがと書いて売られていなくても、ちゃんと管理(冷暗所で保存し輸送されたもの)されて店頭に並べられたじゃがいもならば皮ごと使えます。

ごしごしとスポンジで洗ってみて、しわもよっておらず、水分も抜けておらず、どの部分も緑色にもなっていないじゃがいもでしたらわたしはまず1個を皮ごとお味噌汁などで食べてみて、えぐみをたしかめ、大丈夫なのを確認してから残りのじゃがいもも皮ごとお料理に使うようにしています。

にんじんも農家から出荷されたばかりのにんじんなら皮むきは不要!逆に少し時間が経ってしまったものは、皮ごと調理すると皮の部分が黒っぽく変色してしまったりすることがあるので、これはむいたほうがよさそうです。

玉ねぎは加熱して使うので、通常、特に記載がなければ古玉ねぎ、外側の皮が茶色く、乾燥してパリパリの状態になっているものを使用します。逆に新玉ねぎの季節ならば、分量の中のだし汁の量を減らし、素材から出てくる水分を有効に使います。例えば具材を先にじっくりと蒸し炒めにし、十分にその甘みを引き出しながら調理すれば、調味料も驚くほど少なくても大変おいしくいただけますし、この場合は甘みを付けるためのみりんやお砂糖を使わなくてもしっかり甘いです。

大根は季節的に、冬のお野菜です。ですので、夏場に大根の煮物を作りたい!と無理にスーパーで買ってきて作っても、思っていた味にならなかったりします。なぜなら夏場の大根はかたく、辛味も強いから。煮ても煮てもかたいし味も辛い!夏に買う大根は大根おろしにしたり、せん切りにして刺身のつまかサラダにします。

ごぼうは皮をむかずに調理する方が、圧倒的に香りがよく、様々な栄養素も含まれています。煮物に使うとごぼうのその土くささがアクセントとなり、調味料が少なくても香りで満足感が得られます。

野菜によっては火が通りにくかったり、煮崩れしやすかったり、味がしみ込みにくかったり。

わがままな素材たちのそれぞれの面倒を見ながら作る煮物というのは、いかに繊細なお料理なのかというのがわかりますよねぇ…。

煮物作りの4つの約束

いい素材は集めた!じゃあさっそく煮物を作りましょう。

レシピ通りに調理しまして、煮込み時間は20分か。よ~し20分経ったらできあがりか~!

と、指定の20分後に鍋のふたを開けてびっくり。

色は薄いし、汁もびしゃびしゃ、見るからにおいしくなさそう。

煮込み時間が足りなかったのかな?おしょうゆが足らなかったのかな?

不安になりながらおしょうゆを適当に足し、強火で煮詰めてみれば、今度はどんどん煮崩れていく。

味を何度も見てみるうちに、味見のし過ぎでもはや正解がわからない…。

これをなるべく回避するためにできることは、4つ!

下味を付ける

お肉に下味を付けておくこと。

こうすることでお肉の中まで味がしみ込むので、お肉を食べた時の満足感が出ます。

下味をつける

油で炒める

続いてのポイントは、素材を最初に油で炒め、調味料をしみ込ませやすい状態にさせること。

炒めることで味のしみ込みがよくなり、結果煮込み時間が短くなるので煮崩れ防止にもつながります。

材料を炒める

仕上げに香り付けをする

仕上げに香り付けになるもの(かつおぶしやしょうゆ)を入れ、薄味でも満足感を出すために香りの演出をします。

香りづけ

味をしみ込ませる

煮物は冷めるときにグッと味がしみ込むので、一旦冷まします。なるべく底の広い調理器具を使用するのも手です。

一旦冷ます

この4つの約束を守りながら調理をしてみてください。

味見をするのは冷めてから

そして、味をみるのは一旦冷めてから。

少し薄いかも?くらいでちょうどよいと思いますが、もしも絶対薄い…!と思ったら、お塩をひとつまみ入れてみてください。驚くほど味がキュッと引き締まります。

ちなみになんですが、煮物はご飯がもりもりすすんじゃうような濃い味付けにせず、薄味を心がけたほうが健康的ですし、濃い味担当はお漬物やお刺身のおしょうゆなどに任せ、煮物はパクパク食べられちゃうくらいの薄味が献立のバランスとしても理想です。

薄味でも満足感を出すためには香りの演出、ということで仕上げにおしょうゆをちょろっと垂らしたり、かつおぶしを入れたりすると良いと思います。

臨機応変さも料理を楽しむ大事なポイント

ということを踏まえて、あとは素材の状態を見ながら臨機応変にお料理を楽しんでいただくのが良いかなと思います。

毎回全く同じ味にならなくても、季節や素材によって味わいが変わったり、食べる年齢層によって味付けを変えたりするのもまた楽しいものです。

いつもは入れない煮物に玉ねぎを入れてみた時のその甘みの出方に驚いたり。

逆にいつもは入れているごぼうを入れなかったときの香りの物足りなさにびっくりしたり。

厚手のお鍋だと熱が均一に入るので、初心者でも失敗しにくく、焦げずに中までしっかり火が通っておいしいです。

臨機応変に、じゃあ七味を振って食べようかとか、山椒をのせてみようか、練りがらしを添えてみようかと、食卓で仕上げてもらうプラスアルファのポイントを持ってくるのもまた楽しいです。

ちなみにお砂糖ですが、わたしは煮物にはキビ砂糖や黒糖を、甘さを出すためというよりもコクを出すために使うこともあります(玉ねぎや大根など甘い野菜を入れるときは入れずに作るのもおすすめ)。白砂糖よりもやさしい自然な甘みがあるので、あっま!!!!!!!とはなりにくいと思います。

同じく、メープルシロップもお料理に使うとお砂糖のガツーンとした甘さよりも、素材自体の甘さが上がったような甘みの出方をするので、煮物の仕上げにちょっと入れるとおいしいです。

「かつお薫る根菜の煮物」レシピ

今回も世にある様々なレシピで作るときの参考になるようにお話したので、レシピは要らないかなーとは思うのですが、この記事を書くにあたって煮物を作ったのでご紹介しますね。

「かつお薫る根菜の煮物」

分量

4人分

材料

・鶏もも肉…1枚(250g)

・れんこん…1節(200g)

・ごぼう…1本(150g)

・こんにゃく…1枚(200g)

・長芋(または里芋)…250g

・にんじん…1本(150g)

・ごま油…大さじ1

A

・塩…小さじ1/2

・しょうゆ…小さじ1

・酒…大さじ1

B

・だし汁または水…1カップ

・しょうゆ…大さじ2

・みりん…大さじ2

(お砂糖を入れる場合は小さじ1~2ほど)

C

・しょうゆ…大さじ1

・かつおぶし…1パック

作り方

1. れんこんとごぼうは乱切りにして水にさらす。こんにゃくは手でちぎり、にんじんと長芋は乱切りに、鶏もも肉は2cm角に切ってAをもみ込む。

2. 鍋にこんにゃくを入れて中火にかける。水分を飛ばすように乾煎りにしたら、端に寄せてごま油を入れ、1の鶏肉を炒める。続いて水気を切った他の野菜もすべて入れ、かき混ぜて蓋をし10分ほど蒸し煮にする(途中何度かかき混ぜる)。

3. Bを入れ、落し蓋をして10分ほど煮る。Cを加えて混ぜ、火を止める。冷めるまでおいて味をしみ込ませる。

 

というわけで、レシピの通りには決して行かないのが煮物の世界。

その時の一期一会を大切に、お料理を楽しみましょう!

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井上かなえ(かな姐)

料理研究家。野菜ソムリエ。忙しくても手早く作れてきちんとおいしいレシピが支持されている。毎日の家ごはんやレシピを紹介するブログ「母ちゃんちの晩御飯とどたばた日記」は、「レシピブログ」の人気ブロガーランキングで殿堂入りするほどの人気。神戸、東京で料理教室を主催するほか、NHK「きょうの料理」の出演や、企業のメニュー開発、書籍でのレシピ提案など幅広く活躍。著書に『はじめての自炊練習帖』(ダイヤモンド社)、『15分スープひとつで満足ごはん』(講談社)など。

 

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