【おいしい暮らし】星野奈々子さんが、レシピで“キリのいい数字”を使う理由
同じメニューでも、雑誌によって少しずつ材料も作り方も変えている
料理の世界でお仕事をするようになったきっかけは?
「会社員時代に趣味として通い始めたル・コルドン・ブルーでフランス料理の面白さにはまり、料理を仕事にしたいと考えるようになりました。その後、祐成陽子クッキングアートセミナーに通ってフードコーディネートを学び、卒業後すぐにブログを始め、そこから少しずつお仕事をいただけるようになりました。
初めて雑誌にレシピを掲載していただいたのは『エル・ア・ターブル(現エル・グルメ)』。それも、お仕事のご縁で編集長さんにご紹介いただいたのがきっかけでした。撮影では初めてのことばかりで、緊張で心臓がばくばくしたのは今でもよく覚えています!」
レシピを考えるうえで大切にしていることはなんですか?
「お仕事でレシピを考えるときは、読者目線を徹底的に意識します。たとえば、同じメニューでも雑誌によって読者の年代や料理に対する意識は変わるので、それに合わせて、少しずつ材料も作り方も変えるようにしています。書籍の場合も、どんな読者に向けての本なのかは最初に決めるので、それに合わせてレシピを考えます。
メーカーさんのお仕事の場合は、その製品を活かせることを一番に考え、自分の色やこだわりを出さないように気をつけています」
読者目線といえば、調味料や食材の分量にも気をつけていることがあるそうですね?
「私のレシピでは、できるだけ“キリの良い数字”を使うことを心がけています。たとえば、大さじ1と1/2などはよっぽどでないと使わず、他の分量で調整するようにします。本を閉じて覚えられない数字だと、作る意欲も失せてしまいがちです。それに、覚えやすい数字で何度か作っているうちに、味見や感覚で、本を見なくても作れるようになると思います」
お忙しい毎日、お時間のないなかで「味も見た目もおいしくするコツ、準備」などアドバイスをお願いします!
「普段の料理は、冷蔵庫にある残りものを組み合わせて作ることが多いのですが、いろいろな種類の野菜を少しずつ使っていくと、自然に見た目は良くなる気がします。たとえば、シンプルな冷やし中華も、冷蔵庫の野菜をたくさんのせると趣きが変わりますよ。
あとは、料理の色がどうしても地味な場合には、器の色に助けてもらうこともあります」
器といえば、どんな器がお好きですか?どちらで購入することが多いですか?
「シンプルだけれど味のある色合いの、作家さんの器が好きです。Instagramにのせているものでは堂本正樹さん、大渕由香利さん、船串篤司さんなど。ほとんどが個展にうかがって購入します。
アンティークも好きで、フランスのアンティークのバイヤーさんのイベントで購入することが多いです。SOUVENIR de PARISさんのイベントによく行きます。シンプルな白いものや、いかにもアンティークっぽい柄物もいいですね」
食材や調味料選びでこだわっていること、気を付けていることは?
「お酢、みりん、料理酒は決まったものを買い続けています。お酢は、創業明治26年の京都・宮津にある飯尾醸造さんの「純米富士酢」。お酢の原料となる無農薬のお米作りから携わられていて、美味しさはもちろん、蔵のお酢造りに対する理念を尊敬しています。
「三州三河みりん」は、本みりんのなかでも特に美味しく、食材のうまみを引き立て、照りやつやも良くしてくれます。飲んでも美味しいのでお正月のお屠蘇としてもオススメです。
そして、福島県白河郡にある老舗の酒蔵、大木大吉本店の「こんにちは料理酒」。素材の味を引き立てるアミノ酸が通常の料理酒の4~5倍も含まれています。料理酒は目立たない調味料ですが、変えるといつもの料理がぐっと美味しく感じられるはずですよ」
星野奈々子さんのMy Best レシピは?
料理に関することで、これからどんなことにチャレンジしてみたいですか?
「料理のお仕事を始めて10年以上になり、同じ時期にはじめた仲間たちはお店を始めたり、Youtubeを始めたり、新しいことにチャレンジしています。私も何かやらなくてはいけないかなと思った時期もあったのですが、やはり、今までやってきたお仕事がとても好きなので、これまで通り、料理本の作成、雑誌やメーカーさん用のレシピ考案のお仕事を続けていきたいと思います」
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「料理の幅を広げるため、いろんな国に行って料理を学びたいです」という星野さん。今回ご紹介いただいたカオンマンガイや魯肉飯のように、食べやすく、そして作りやすく星野さん流にアレンジされた世界のレシピを拝見する機会は、これからもますます増えそうですね!
星野奈々子さんへのQ&A
ブログを始めたきっかけは?
「かなり昔なので記憶が定かではないですが、フードコーディネータースクールですすめられたためだと思います。当時は、料理のお仕事をもらうならブログがないと!という雰囲気でした」
大好物といえば?
「特定のメニューではないですが、ワインに合うおつまみのような料理が好きです」
インテリアやライフスタイルなど参考にしているショップ、カフェ、雑誌、サイトなどはありますか?
「器などテーブル周りは、雑誌の『エル・グルメ』を参考にしています」
料理以外で、リラックスタイムの過ごし方といえば?
「子どもと遊ぶこと。ひととおりのことは自分でできるようになったので、赤ちゃんの時のように大変なことがなくなった上にまだ無邪気そのもの。一緒にいるだけで癒されます。1人で空いた時間がある時は、ひたすら読書。ビジネス書が好きで、興味のあるものがあればすぐに本屋さんかAmazonで購入して読んでいます」