おせち料理にも♪韓国ドラマでもおなじみの「ジョン」の作り方
こんにちは!韓国料理研究家の本田朋美です。
2023年も残すところ、あとわずかとなりました!クリスマスの後はお正月に向けてテンションが上がりますね♪
日本では元旦に新年を祝いますが、お隣の韓国では旧暦でお祝いする文化が根強く残っていて、2024年のソルラル(旧正月)は2月10日です。1か月ほど先ですね。
そして、お正月の日にちは違えど、日韓ともに楽しみといえば食事ですよね?
そこで今日は、韓国の旧正月で必ず食べる「ジョン(または、チョン)」についてお話します!
韓国ドラマでおなじみの「ジョン」
「チヂミ」と「ジョン」の違い
2022年5月にお届けした「海鮮ねぎチヂミ」の記事でチヂミの話を詳しく書きましたが、韓国ではチヂミという言葉はあまり使われていません。
おおまかに分類すると、材料を薄くスライスするか、小さいものはその形のまま下味をつけて小麦粉を薄くはたき、卵液にくぐらせて両面を油で焼いたものは「ジョン(煎)」、具材を細かく切って、小麦粉ベースの生地と混ぜ合わせて油で平たく焼いたものは「プッチムゲ(または、プチムゲ)」といいます。
日本では、細かく切ったりすり下ろしたりした野菜に海鮮や肉を組み合わせて大判で焼いたものを「チヂミ」、素材を薄く切って下味をつけ、小麦粉をまぶして卵液にくぐらせ、油で焼いたものを「ジョン」と呼び、ジョンは「韓国風ピカタ」というような認識だと思いますが、実は卵だけでなく、黄色いクチナシ水に小麦粉を解いて衣にした「ジョン」もあるんですよ。
朝鮮時代の「ジョン」は上流階級の食べ物だった
「ジョン」という料理が朝鮮半島にいつから存在したのかは不明ですが、もともとは朝鮮時代の貴族階級の間で一般的なものでした。
朝鮮時代後期の1800年代後半に刊行された料理書ではジョンの作り方が紹介されていて、この本ではジョンを「ジョニュオ(煎油魚)」と表記しています。この料理名は朝鮮王宮使われていたもので「ジョニュファ(煎油花)」という表現もありました。ジョニュファの「ファ」は「花」。料理を華麗な花にたとえるなんて趣がありますよね!
階級によってジョンの材料が変わる
当時はどんなふうに食べられていたのか、韓国特有の「パンサン(飯床)」というお膳立てに沿ってお話していこうと思います。
パンサンの料理数は階級によって異なり、キムチ、ご飯、スープ、つけだれを除いたおかずの数でお膳の呼び名が変わります。
一番階級の低い人は「サムチョプパンサン(三楪飯床)」で、おかずは三種類。おかずの中にジョンは入りません。
少し経済的に余裕のある庶民は「オチョプパンサン(五楪飯床)」で、ここには野菜のジョンが2種類含まれます。
次に貴族のお膳である「チルチョプパンサン(七楪飯床)」や「クチョプパンサン(九楪飯床)」になると、おかずが7種類や9種類になり、ジョンの材料は白身魚や貝に。そして王様になると、シビチョプパンサン(十二楪飯床)」と言っておかずが十二種類にあって、ジョンの材料は白身魚となまこのような高級食材になります。
このように、階級によってジョンの材料が変わったのですが、1番下の階級のお膳にはジョンは入らなかったことからも、やはり上流階級の食べ物だったのですね。
ジョンを使った「口が悦ぶスープ」
王様の話が出たので、ここでジョンを使った宮廷料理をご紹介します。
神仙炉(シンソンロ)と言って、せりや肉団子、白身魚などのジョンを、薄口しょうゆで味付けした牛肉のスープで煮ていただく鍋料理です。別名「悦口子湯(ヨルグジャタン)」とも言い、「口が悦ぶスープ料理」という意味なんですよ。
私が最初に食べたのは今から15年前です。韓国料理を初めて習った先生が高齢で引退されるということで、先生が生徒たちに振る舞ってくださったのが「シンソンロ」でした。恐らく日本で食べられるお店はなかなかないと思いますが、韓国でシンソンロを食べる機会に恵まれると、その先生のことを思い出します。
韓国ドラマでおなじみ!ご先祖さまに供える「ジョン」
朝鮮時代には上流階級の食べ物だったジョンですが、現代では「ハレの日の料理」となり、中でも旧盆のチュソク(秋夕)や、旧正月のソルラルでは、ご先祖さまにお供えをしてから家族や親族みんなでいただきます。
韓国ドラマ好きのみなさまは、旧盆や旧正月の前日に家族が床の上に座って、ホットプレートで延々と大量のジョンを焼き続けるシーンを一度はご覧になったことがありますよね?
私がとても好きだったドラマ『スタートアップ 夢の扉』にも、そんなシーンが出てきます。談笑したり、途中でつまみ食いをしたりしながら楽しそうにジョンを焼いている様子には、非常に韓国らしさを感じます。
また韓国ではプンシクチッ(粉もの屋)といって、ジョンを中心にキンパ、トッポッキ、スンデ(豚の腸詰)といったメニューがずらりと並んでいる専門店があり、そこでの人気メニューはモドゥムジョン(ジョンの盛り合わせ)です。
ジョンはお酒のおつまみになるので、これとマッコリをグビグビやるのが韓国では定番。ちょっと甘めのマッコリが、たっぷりの油で焼いたジョンをすっきりと胃の中に流し入れてくれるんです。
さて今回は、3種類のジョンのレシピをご紹介します!
今回は、韓国らしくコミョン(飾り)をのせて焼いてみました。
韓定食や宮廷料理のコースにはほぼ必ずジョンがメニューに入っていて、高級店になるほどジョンに飾りが施されています。その飾りが「コミョン」で、「あなたの為に作りました。まだ誰も手をつけていません」という配慮であり、とても尊い意味を持つものです。
もうすぐお正月ということで、日本のおせちにジョンを組み合わせるのもいいですね。見た目が華やかになりますしお味の方も間違いありません。
また、お弁当のおかずとしてもおすすめです。息子の高校時代によくお弁当にジョンを入れていました。簡単でおいしいので、ぜひレパートリーに取り入れていただけたらと思います!
「モドゥムジョン(ジョンの盛り合わせ)」レシピ
調理時間
30分
分量
2人分
材料
・しいたけ…4枚
・韓国かぼちゃ(または、ズッキーニ)…1/4本分
・たら…100g
・塩…適量
・小麦粉…適量
・卵…1個
・サラダ油…大さじ1
・赤パプリカ…適宜
・春菊…適宜
・小ねぎ…適宜
(A)
・しょうゆ…小さじ2
・酢…小さじ1
・砂糖…小さじ1
・白ごま…小さじ1/4
作り方
1. パプリカは裏側から削ぎ落して薄くし、花型で抜く。春菊は葉先を切り、小ねぎの葉先は1cm程度に切る。
2. しいたけの軸を切り落とし、傘の表面を飾り切りする(飾り切りはしなくても可)。しいたけのひだの部分に塩少々をふり、水気がでてきたらキッチンペーパーでふく。
3. 韓国かぼちゃまたはズッキーニは幅5mmの輪切りにし、両面に塩少々をふる。水気がでてきたらキッチンペーパーでふく。
4. たらの身を一口大にそぎ切りし、両面に塩少々をふる。水気がでてきたらキッチンペーパーでふく。
5. バットに小麦粉を入れ、しいたけのひだの部分、韓国かぼちゃとたらは全体的に小麦粉をまぶす。余分な小麦粉ははたいて落とす。
6. ボウルに卵を割り、塩少々を入れて良くときほぐす。しいたけのひだの部分、韓国かぼちゃとたらは全体に卵液をつける。
7. フライパンにサラダ油大さじ1/2を引いて弱火にし、韓国かぼちゃとしいたけをのせる。韓国かぼちゃの上に、花型に抜いたパプリカ、春菊、春菊を飾る。下面が焼けたら裏返す。飾りをつけた面は、さっと火が通る程度に焼き、しいたけはしっかり焼いて取り出す。
8. 7のフライパンをキッチンペーパーでふいてから新しくサラダ油大さじ1/2を引いて弱火にし、たらの両面を薄く焼き色がつくまで焼く。器に3種類のジョンを盛り付け、(A)を混ぜ合わせたたれ添える。
コミョン(飾り)は少し手間ですが、時間に余裕があったらぜひトライしてみてください。
今回、材料に韓国かぼちゃを入れましたが、ズッキーニでも作れます。ズッキーニは韓国かぼちゃよりも細いので、斜め切りにして面を広くとると飾りがつけやすいです。
ジョンは肉、レバー、えび、かき、長芋、エリンギ、などどんな材料でも応用がききますので、お好みの材料で色々と試してみてくださいね。
それでは今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!