圧倒的なおいしさ!味付けがポイント♪本場韓国の「チャプチェ」の作り方
こんにちは!韓国料理研究家の本田朋美です。
韓国料理といえば唐辛子を使った辛さが印象的だと思うのですが、実際には辛くないものもたくさんあります。
中でも代表的なのは、「チャプチェ」ではないでしょうか?
日本でも手軽なアレンジレシピで作っている方が多くいらっしゃると思います。
そこで今月はこの「チャプチェ」の奥深い歴史や食文化について紐解いていきたいと思います!
「雑菜」と書いて「チャプチェ」
もともとチャプチェに春雨は入っていなかった!
日本でも「チャプチェ」という韓国語の料理名がかなり浸透しましたよね!
このチャプチェという言葉、漢字では「雑菜」と書きます。(韓国語には漢字由来の言葉が多くあります)
チャプ(雑)チェ(菜)は、いまでこそ春雨を使った韓国料理として知られていますが、朝鮮時代のチャプチェはかなり異なります。
1670年頃に出版された韓国の料理書には「生野菜や加熱した具材などを一皿に盛り付け、味付けしたスープをかけ、混ぜ合わせて食べる料理」として紹介されており、なんと春雨は一切使っていないんです!
この料理書にゆかりのある韓国の地方都市・英陽(ヨンヤン)には、朝鮮時代の料理を再現している文化体験施設があります。私はここで2度ほど当時の「チャプチェ」食べたことがあります。それがこの写真です。
中心に盛り付けられているのは雉(キジ)肉です。今は高級食材ですが、朝鮮時代には野生の雉が料理によく使われていました。
雉肉の奥の左から時計回りに、大根、岩茸、ケイトウの花で染めた大根、きゅうり、ききょうの根、しいたけ、せり、エリンギ、わらび、ほうれん草です。
※大根をなぜケイトウで染めているかは、後述します!
そして、具材の上にかかっているスープも手が込んでいて、雉肉でとっただしにみそで薄く味付けをし、ごま油で風味を付け、小麦粉でとろみを付け、さらに山椒と、当時は高級だったこしょう、しょうがのしぼり汁を加えています。
チャプチェに春雨を入れるようになったのはいつ?
朝鮮時代は野菜と雉肉が中心だったチャプチェに、今のように春雨が入るようになったのかいつからなのか、気になりますよね?それは、現在の空港がある仁川(インチョン)の開港が大きな契機でした。
1883年に仁川港が開港すると、朝鮮では日本や中国との貿易がどんどん盛んになり、この時に中国からタンミョン(漢字で書くと「唐麺」)が伝わったんですね。韓国で春雨を「タンミョン」と呼ぶのはこれが由来です。
仁川に近い、現・北朝鮮の平壌(ピョンヤン)で繫盛していた中国料理店では、このタンミョン(春雨)が入ったチャプチェが飛ぶように売れていたそうで、その人気ぶりに目を付けた朝鮮人が北朝鮮側にタンミョン工場を作りました。当時、現在のソウル付近だけでも中国料理店が200軒以上あったので、タンミョンの消費量は相当だったと想像できます。
1920年代に入るとタンミョン工場は朝鮮半島の各地に拡大します。そして1921年に出版された「朝鮮料理製法」いうレシピ本でタンミョン入りのチャプチェの作り方が紹介され、国民から朝鮮料理として受け入れられたのです。
その後チャプチェは、長いタンミョンを使っていることから長寿への願いがこめられ、お正月や誕生日などお祝いの日に欠かせない料理となりました。
チャプチェの具材は「陰陽五行説」に基づいている
ここでチャプチェの具材についてお話します。
チャプチェに使う食材の主な色は、基本的に五色です。
この五色は韓国料理の考え方である「陰陽五行説」に基づいており、赤、青(緑)、黄、白、黒の五色の食材をまんべんなく使うことで栄養のバランスを保つと考えられています。
韓国でよく使われるチャプチェの食材を例にあげて分類してみますね。
赤:赤唐辛子、赤パプリカ、牛肉
青(緑):ほうれん草、せり、にら
黄:玉ねぎ、卵の黄身、にんじん
白:卵の白身、桔梗の根
黒:きくらげ、干ししいたけ
「赤」の食材は、現代でしたら唐辛子やパプリカ、牛肉などがありますが、朝鮮時代の中期頃までは赤い食材があまりありませんでした。そこでケイトウの花を水にひたして色を出し、ここに大根や冬瓜を入れて赤く染めて使っていたのです。驚きの事実ですよね!
本場のチャプチェは食材ごとに調理・味付けを行う
いままで食材の話をしてきたので、これからは本場の作り方についてお話しますね。
現代は時短料理がもてはやされていますが、本来のチャプチェの作り方は時代に逆行していて非常に手間がかかります。
食材をひとつずつ調理・味付けしていくので、玉ねぎを炒めたらフライパンから取り出して、次はにんじんを炒めて取り出し、次は牛肉…という手順を踏みます。
春雨は一度湯がいてから下味をつけ、春雨だけを炒めます。
そして最後に調理した全ての材料をボウルに入れて混ぜ合わせるんです。
こういった工程を踏むことによって、時間がたっても食材同士がくっつきにくく、もちもちとした春雨の食感が楽しめるのです。
チャプチェの上にのせる「飾り」の深い意味
また、チャプチェの上にのせる飾りも重要です。
この飾りは「コミョン」といって「あなたのために作りました、誰もまだ手を付けていません」という深い意味があるのです。
食材の色の箇所で書きましたが、コミョンは卵の白身と黄身を別々に焼いた錦糸卵が一般的です。
また、この白身と黄身のコミョンはチャプチェ以外でも良く使いますので、この飾りがのった韓国料理がでてきたら、作った方は相当こだわりがあると思って間違いないです!
例えばこれは、カルビチムにのせた白身と黄身のコミョンです。
それでは、最後に「チャプチェ」のレシピをご紹介します。本場の作り方を少しだけ簡単にした方法です。
錦糸卵は全卵にしましたが、挑戦したい方は、黄身と白身を別々に焼いてみてください。白身がフライパンにくっつきやすいので、弱火で黄身を焼いてフライパンがよくなじんだ後に白身を焼くのが上手に焼くコツです。
本場韓国の「チャプチェ」レシピ
調理時間
30分
分量
3~4人分
材料
・玉ねぎ…1/4個
・にんじん(中サイズ)…1/4本
・赤パプリカ…1/4個
・にら…1本
・溶き卵…1/2個分
・塩…適量
・サラダ油…大さじ1/2+小さじ1/2
・白ごま…小さじ1
・牛こま切れ肉…100g
・干しきくらげ…7~8個
・ごま油…大さじ1
[A]
・しょうゆ…大さじ1
・砂糖…大さじ1/2
・おろしにんにく…小さじ1
・ごま油…小さじ1
・こしょう…少々
・韓国春雨…100g
[B]
・しょうゆ…大さじ2
・砂糖…大さじ1/2
作り方
1. 玉ねぎは薄切りにし、にんじんは長さ5cmのせん切りにする。赤パプリカは縦にせん切りにし、にらは長さ5cmに切る。
2. フライパンにサラダ油大さじ1/2を加え、にんじんを中火で1分炒めた後、玉ねぎを入れて1分、赤パプリカ、にらを加えてざっと炒めたら塩少々で味付けする。炒めた野菜はボウルに入れておく。
3. 別のボウルに溶き卵と塩少々を加えて混ぜる。フライパンにサラダ油小さじ1/2を熱し、薄焼き卵を作る。冷めたらせん切りにして錦糸卵にする。
4. 干しきくらげはぬるま湯で戻して、手で一口サイズにちぎる。牛肉ときくらげを[A]で味付けし、フライパンに入れて中火にかけ、牛肉に火が通るまで炒めたら、2のボウルに入れる。
5. 鍋にたっぷりの水(分量外)を入れて強火にかけ、沸騰したら水でさっと洗った韓国春雨を袋の表示通りにゆでる。ゆであがったらざるにあげて水で洗い、水気をよく切る。
6. フライパンに5の春雨と[B]を入れて、水分が飛ぶくらいまで炒めたら、4のボウルに入れる。
7. すべての材料が入ったボウルにごま油を回し入れ、具材が均等な混ざり具合になるまで和える。味をみて、足りなかったら塩で味を調える。器に盛りつけ、錦糸卵を上に飾り、白ごまをふる。
30cm以上長さのある韓国春雨を使う場合は、湯がいて水で洗った後に切ってください。
フライパンは、食材がくっつきにくいテフロン加工のものが理想です。
干しきくらげの代わりに干ししいたけを使うと、味に深みがでますよ!
それでは今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!