10分で韓国気分♪白だしとサラダチキンで「ピリ辛水冷麺」
こんにちは!韓国料理研究家の本田朋美です。
残暑が厳しい夏ですが、いかがお過ごしでしょうか?体を労わりつつ、無理をしないで乗り切りたいですね。
さて、暑い時はやはり冷たいものが食べたくなります。
そこで今日は、韓国の代表的な冷たい麺料理「冷麺」についてお話します!
ちょっと意外な冷麺の歴史
実は北朝鮮が発祥地!
日本でもすっかりおなじみになった韓国冷麺。麺の主原料はそば粉ですが、朝鮮半島におけるそばの産地は朝鮮半島の北側。冷麺は北朝鮮発祥の料理なんです。
そば自体は紀元前から存在したのでもっと昔からあったかもしれないのですが、冷麺という形で文献に登場するのは16世紀頃に入ってからです。麺は元々そば粉だけで作られていましたが、朝鮮時代にはつなぎとして緑豆でんぷんや小麦粉が加えられていました。ただし緑豆でんぷんや小麦粉は高価だったので、冷麺を含む麺料理は、お祝いの席で食べる特別な食べ物だったのです。
その後、18世紀~19世紀にかけてじゃがいもの栽培が浸透し、じゃがいもを原料とした安価なでんぷんとそば粉を合わせた麺が作られるようになったことで、普段の食事としても親しまれるようになりました。
スープが凍ってシャーベット状に…元々は冬の食べ物だった!
冷麺は今でこそ代表的な夏の麺料理ですが、本来は冬の食べ物でした。
意外ですよね?
その理由には、冷麺スープに活用する大根の水キムチ「トンチミ」が関係しています。
湯がいて水でしめた麺を器に入れ、トンチミの汁を注ぎ、食べやすい大きさに切った大根を具としてのせたシンプルなものが当時の冷麺です。
現在もそうですが、朝鮮時代、大根の旬に合わせて初冬にトンチミを漬けていました。当時はトンチミをいれた甕(かめ)をまるごと土に埋めて保存していたのですが、土の中は温度変化が少なく、冬は天然の冷蔵庫のような状態でしたから、甕の上部が凍ってしまい、汁がシャーベット状になることもあったとか。
「真冬にキンキンに冷えた冷麺を食べるなんて!」と思われるでしょうが、朝鮮半島は古くから床下暖房(オンドル)が普及していたので、温かい部屋で冷たい麺料理を食べるのは普通のことだったのです。
冷麺が夏の食べ物に変わったきっかけ
1900年代に入ると北朝鮮から来てソウルで商売を始める人たちが増え、平壌冷麺や北朝鮮の地方都市である咸興(ハムン)の冷麺を出す店が増えました。
その頃ちょうど、冬に川で採取した氷を夏まで保管できる冷蔵施設ができ、氷を利用してスープを冷やすことが可能になったため、ひんやりおいしい冷麺を暑い夏に楽しめるようになったのです。
平壌冷麺のスープに使われる肉は四種類!
こうして夏にも冷たいスープで味わえるようになった冷麺ですが、スープを取る食材にも特徴があります。
一般的な冷麺スープは牛肉の出汁をベースに、トンチミの汁を合わせ、薄口しょうゆで味付けをしていますが、伝統的な調理法を守っている平壌冷麺のお店では、出汁をとるために牛肉だけでなく雉(キジ)肉、豚肉、鶏肉を使っています。肉を四種類も使うとは、なんとも贅沢ですよね!私自身、ソウルで平壌式の冷麺を何度か食べたことがありますが、スープは透き通るような色合いでやさしい薄味。一口目、二口目はあまりインパクトがないのですが、箸を進めるごとにするすると喉元を通っていき、いつの間にか完食してしまうようなおいしさでした。
釜山式の冷麺「ミルミョン」
北朝鮮をルーツに持つため北側の料理というイメージが強い冷麺ですが、韓国の南側にある韓国第二の都市・釜山にも小麦冷麺(ミルミョン)という冷たい麺料理があります。「ミル」というのは韓国語で小麦のことで、その名の通り麺の主原料は小麦粉です。
朝鮮戦争の混乱から釜山に避難した北朝鮮の人たちが、釜山で手に入る食材で故郷に近い味を出そうと編み出したもので、韓国の南側ではそばが取れないので、アメリカ軍から支給された小麦を使って試行錯誤した末に麺を完成させました。
スープは豚骨を煮出したものがベースで、北側の冷麺と違ってトンチミの汁は入れません。また唐辛子ペーストがのっているので、このペーストを少しずつ解きながら食べ進めると、味の変化を楽しめるのも醍醐味です。
「ビビン冷麺」は元々ピリ辛ではなくしょうゆ味だった!
冷麺には、スープに浸さずコチュジャンベースのソースと和えて食べるビビン(韓国語ではビビム)冷麺もあります。
ビビン冷麺の元々の名称は骨董麺(コルドンミョン)。「骨董」とは、色々な材料をのせて混ぜる食べ物という意味です。唐辛子が朝鮮半島に入る前、ビビン冷麺はしょうゆ味のたれを絡めていましたが、1800年の後半になると唐辛子が使われるようになり、辛くなりました。
辛いビビン冷麺といえば、ガンギエイの刺身がのった北朝鮮の咸興(ハムン)のものが有名です。ソウルでも楽しめますので、機会があったら本場の専門店に行ってみてください!
それでは最後にレシピを紹介します。
白だしを使ったピリ辛水冷麺です。私が自分のために良く作る麺料理です!
10分で韓国気分♪白だしとサラダチキンで「ピリ辛水冷麺」
調理時間
10分
分量
1人分
材料
・冷麺用の麺(冷や麦やそうめんで代用しても可)…1人分
・きゅうり…1/4本
・トマト…1/4個
・ゆで卵…1/2個
・サラダチキン…25g
・レモン(薄切り)…適宜
・白ごま…適宜
A
・白だし…大さじ1/2
・コチュジャン…大さじ1/4
・砂糖…小さじ1/2
・酢…大さじ1/2
・水…250ml
・塩…適量
作り方
1. Aをすべてボウルに入れて混ぜ合わせ、冷凍庫に入れるかボウルの外側に氷水(分量外)をあてて冷やす。
※冷凍庫に入れる場合、長時間おいてカチコチに凍ってしまわないようご注意ください
2. きゅうりは長さ5cm、幅3mm程度の薄切りに、トマトは3mm程度に薄くスライスする。サラダチキンは手でほぐす。
3. 麺を熱湯(分量外)で表示通りにゆでたら、水で洗ってぬめりをとり、水気を切る。
4. 器に麺を盛り、きゅうり、トマト、ゆで卵、サラダチキン、レモンをのせ、1のスープを注ぎ入れたらお好みで白ごまをふり、レモンの薄切りを添える。
甘味、辛味、酸味、うま味が混然一体となったピリ辛水冷麺。白だしを使うので、あっという間に作れます。麺料理のレパートリーに加えてくださいね!
スープの味付けは、ややしょっぱい方が麺とよくなじみます。コチュジャンと酢の量はお好みで増減してください。お好みでスープに氷を入れ、さらに冷たくしてもいいですね。
本場の冷麺には梨の薄切りがのっていることが多いです。ちょうど梨の季節なので、この冷麺にものせるとよく合うと思います。キムチがあったら、キムチも一緒にどうぞ。
最後にお知らせです!
9月14日にイースト・プレスから新刊が出ます。タイトルは『はじめてキムチの本』です。
基本の白菜キムチから、ミニトマトやセロリといった珍しいキムチ、キムチのアレンジ料理もあります。キムチの背景にある食文化についてのコラムも執筆し、渾身の一冊となりました。キムチが好きな方、キムチを使った料理が好きな方、「自分でキムチを漬けてみたい!」という方に、お手に取っていただければと思います。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!