夏バテ撃退!手軽に作れる「ロール参鶏湯」で、韓国式に暑さを乗り切ろう♪
こんにちは!韓国料理研究家の本田朋美です。
ビザが必要とはいえ約2年ぶりに渡韓が可能になり、私の周りでも韓国旅行の計画を立てる人たちが出てきました。
韓国旅行のお楽しみの一つといえば、グルメですよね!
韓国では夏になると、参鶏湯(サムゲタン)の専門店が活気を帯びます。その理由には、韓国の伝統的な習慣が大きく関わっています。
そこで今回は、本場韓国の参鶏湯についてお話したいと思います。
真夏こそ食べたい!韓国での「参鶏湯文化」
朝鮮時代、鶏肉は特別な来客のときだけ食べられた
参鶏湯に使うお肉は、ひなの丸鶏です。今では手頃な値段で買うことができますが、朝鮮時代は贅沢品。貴族階級の家庭に特別な来客があるときだけ、飼育している鶏をさばいて料理していました。当時は意外にも、狩りで仕留められる雉(キジ)肉の方が一般的だったのです。
その後1900年代に入ると、国が農家に副業として養鶏をすすめたことで鶏肉が普及します。このときに作られるようになった料理が「鶏スープ(タックク)」です。
タッククは、鶏肉の頭、足、手羽の先を切って内臓を取り除いた後に、もち米と乾燥させた高麗人参の粉を入れて腹を閉じ、水で煮たものです。この時代のタッククは参鶏湯の原型と言ってもいいでしょう。
その後、タッククは味付けされるようになりますが、一方で味付けせずに煮る鶏料理の方を「白熟(ペクスク)」と呼ぶようになりました。
もともとは「鶏参湯(ゲサムタン)」だった
朝鮮戦争が終わると、ペクスクが飲食店の料理になりました。時を同じくして、生の高麗人参が一般的に流通。朝鮮時代は粉にして利用していた高麗人参をそのままの形で使うようになり、お店が「鶏参湯(ゲサムタン)」として売り出しました。「参」という文字は高麗人参のことを表しているので、「鶏参湯」は「高麗人参を使った体に良い鶏料理」というイメージを与えるために考えられた料理名なのです。
その後、1960年代に入ると「参鶏湯(サムゲタン)」に名前が変わりました。その理由は、「参」の字をより前に出して、健康食のイメージを高めるためでした。
真夏に熱々の参鶏湯を食べる意味
そんな参鶏湯。専門店があるほどポピュラーで一年中食べることができますが、冒頭でも話したように、韓国では夏に注目が集まります。
それは、韓国の夏には「伏日(ポンナル)」という日が3日間あり、ここで滋養強壮のために参鶏湯を食べるからです。韓国では旧暦で物事を進める習慣が残っているため、毎年ポンナルは異なります。ちなみに2022年は、7月16日(土)、7月26日(火)、8月15日(月)です。
日本では、土用の丑の日にうなぎを食べて英気を養いますよね?考え方は同じですが、ちょっと異なるのは「以熱治熱(イヨルチヨル)」といって、暑い日に熱い物を食べて熱を治めるという考え方が根底にある点です。熱々の参鶏湯を食べて汗をたくさんかいて、体をすっきりとさせるのです。
本場の参鶏湯、最大のポイントは?
いったん本場の一般的な参鶏湯の作り方をお伝えします。
使用する丸鶏は生後1か月前後の若鶏で、1羽の重さが400g~800gほど。肉質のやわからかさが特徴です。お腹の中を良く洗って血を取り除いたら、水につけておいたもち米、にんにく、なつめ、栗、そして高麗人参を入れてお腹を閉じます。
そして、黄耆(オウギ)などの韓方食材を煮出した汁に丸鶏を入れて、じっくり長時間煮込みます。圧力鍋でもできますが、鍋でコトコト煮込むとより味がでます。
器に盛りつけたら、小口切りにしたねぎや、松の実、クコの実、ぎんなんなどをのせます。
ここまでの作り方をご覧になって、みなさまお気づきになったことはありますか?
実は「味付けをしていない」のです。これが本場の参鶏湯のポイントです!
参鶏湯の味付けは自分の好みで!
韓国の専門店では参鶏湯とともに、塩とこしょうが添えられます。
まずは、鶏肉を食べやすい大きさに箸で取り分けて、塩・こしょうをちょっとつけて味わいます。スープも、塩・こしょうで自分好みの味に調えます。
また、専門店ではテーブルに白菜キムチや大根のカクテキ(韓国語ではカクトゥギ)が置いてあるので、途中からキムチを参鶏湯に入れて味の変化を楽しみます。
この食べ方は参鶏湯に限らず、ソルロンタンのような辛くないスープ料理にも当てはまります。日本の韓国料理店では、参鶏湯もソルロンタンも程よく味付けされた状態で出てきますが、本場では自分で味付けすることがほとんどなのです。
ここまでお読みになられたら、参鶏湯が食べたくなりますよね♪
そこで今日は、1時間あれば簡単に作れる「ロール参鶏湯」の作り方をご紹介します!
ロール参鶏湯(調理時間:60分)
材料(2~3人分)
・鶏もも肉…2枚
・米(もち米、またはうるち米)…大さじ4
・雑穀…小さじ1(なくても良い)
・にんにく…1片
・なつめ…4個
・水…1L
・玉ねぎを…1/4個
・小ねぎ…1本
・松の実…適宜
・塩・こしょう…適量
・タコ糸
作り方
1. 米を洗って水(分量外)に30分つけたら水気を切り、雑穀を混ぜる。
2. 鶏もも肉の厚みを均一にするために観音開きにし、包丁の背でたたく。
3. にんにくの皮をむき、半分に切って芽を取り除き、太めのせん切りにする。なつめは種を取り除き、にんにくと同じ大きさで縦にせん切りにする。
4. 小ねぎの根を切り落として小口切りにする。
5. 鶏肉の皮目を下にして、中央に1の米の半量、3のなつめ半量とにんにく半量をのせたら巻いてロール状にする。具がこぼれないようにタコ糸を巻いて形を整える。もう一枚の鶏もも肉でも同じものを作る。
※つまようじで仮止めすると、タコ糸が巻きやすくなります。米がこぼれ出ないように端の部分は軽く内側に折り込むなど工夫してください
6. 鍋に5を入れて水を注ぎ強火にかけ、沸騰したら中弱火に落とす。アクを丁寧にすくったら、玉ねぎを入れて30分ほど煮て火を止め、玉ねぎをを取り除く。
7. 6の鍋から鶏肉を取り出してタコ糸を取り除き、厚さ2cmに切り分ける。器に盛り付けたらスープを注ぎ入れ、塩・こしょうを添える。食べるときに塩・こしょうで好みの味に調える。
作るのにひと手間かかるロール参鶏湯ですが、美しく盛り付けられるのでおもてなしにもいいですね。何といっても骨がないので食べやすい点が魅力です!
手軽に作れるように、このレシピには参鶏湯に必須の高麗人参が入っていませんが、もし入手できるようであれば、にんにくと同じ量をせん切りにして入れてください。
使用する鍋は、ロール状にしたときの鶏肉の大きさにピッタリはまるサイズがおすすめ。煮込むときに参鶏湯の形が崩れにくいです。
鶏もも肉を煮るときに入れている玉ねぎをの代わりに、長ねぎの青い部分も香味野菜として使えます。
出汁は鶏もも肉だけでもが結構出ますが、もし鶏がらスープの素を使いたい場合は、少量だけ加えてください。
それでは夏バテしないようにお過ごしください。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!